第6回シンポジウムを開催しました。                  2014年4月7日

 平成26年3月17日、豊丘村保健センターにおいて、” 南信州の地域食品資源の産業化へ向けた取り組み”をメインテーマに伊那谷アグリイノベーション推進機構第6回シンポジウムを開催しました。これまでのシンポジウムは、伊那市、飯田市、駒ヶ根市など伊那谷の中でも比較的大きな行政都市で開催してきたのに対し、今回は、南信州広域連合の後援と豊丘村挙げての支援を得て、豊丘村での開催となりました。
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 向山孝一機構長と下平喜隆豊丘村長の冒頭の挨拶の後、キノコ、伝統野菜、鹿肉の3テーマについて、南信州における取り組みを中心に第一線で活躍されている9名の講師による講演がありました。
当日申込みの参加者を含め、企業、行政、教育機関、一般からの参加者約130名で会場の保健センターはほぼ満席となりました。
向山孝一KOA(株)代表取締役会長は、開会挨拶の中で、伊那谷アグリ推進機構の今後の活動の一つとして地場の農産物資源の洗い出しを研究テーマに考えている、その中で長野県の長寿と伊那谷の農産物との関係が科学的に明らかなり、ゆくゆくは事業化でき、産業に発展することを期待している、それには信州大学農学部及び長野県看護大学、飯田女子短大、豊南女子短大による地域のインテリジェンスが一緒になって取組んでいくことが必要との考えを示しました。
開催地、豊丘村の下平喜隆村長は、後援の南信州広域連合と豊丘村を代表して、来場者への歓迎と豊丘村でのシンポジウム開催の歓迎の意を述べられた後、豊丘中学校の素晴らしい桜の下で4月に予定している珍しい官学でのお花見を例に、この地の自然の豊かさをはじめとして、リニア開通後の地の利及び特産品が地域の発展と伊那谷の未来につながることを期待していると述べ、6次産業化へ向けた豊丘村の動きも紹介しました。

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 最初のテーマ1のキノコでは、福田正樹 信州大学農学部教授が「キノコ類の産業化と今後の課題」と題し、きのこの価格、消費が伸び悩む現状をデータで示した上で、大分県の「かとうさんちの乾しいたけ」が特徴ある栽培・乾燥方法でブランド化して高値を維持している例をあげて、きのこ産業の6次産業化に向けての取り組みの事例や畜産業、農産業、食品産業との連携によるきのこ産業の拡大の取り組みを紹介しました。きのこの機能性に関して、エノキダケの栽培農家ではがんの発症率が低いデータから、現状の倍の一日30g/人、1週間では200g/人(ワンパック)を食べるとがんに効果的との有益なお話もありました。
 テーマ1のキノコの一つ目の事例紹介として、柄澤弘子 飯伊森林組合販購買係長が、「南信州における乾ししいたけの生産と販売の現状について」と題し、平成の初期をピークに乾ししいたけの生産額と単価が低下しつつあるなかで、森林組合が地域の特産品の生産を支え、地域経済と活性化と生産者の定住化に向けて乾ししいたけ生産センターを立ち上げて、様々な課題に取組んでいる様子を紹介しました。乾ししいたけを美味しくもどす方法として、乾ししいたけを冷水に浸し、冷蔵庫に厚いものでは24時間置くと大変美味しくなるということです。
 キノコの二つ目の事例紹介として、原博文 みなみ信州農業協同組合きのこ課課長代理が、「JAみなみ信州における新品目開発」と題し、JAみなみ信州が産地の独自性を保ちつつ、市場のニーズに合わせたきのこについて、開発から農家での栽培の方法、販売まで手掛けてきて、実際に栽培・販売されている事例を紹介しました。南信州の代表的なきのこのハナビラタケをはじめとして、バイリング、エリンギとバイリングの交配種および白ブナシメジの栽培の様子が豊富な写真で説明されました。

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 伝統野菜では、大井美知男 信州大学農学部教授が、長野県の信州伝統野菜認定委員会の委員長の立場を含め、長野県でこれまでに69種類選定されている伝統野菜(野菜の在来品種)の選定基準について最初に触れ、商業品種と比較して、収量性、耐病性、そろい、収穫期など商流に乗せるには厳しい面がある一方、個性的な食味と歴史、文化、気候風土、調理方法など地域固有の貴重な財産として見直しされている現状を紹介しました。下伊那には、県内69種の伝統野菜の約1/3が集中していて、伝統野菜が数多く伝承されてきているといえるとのことでした。また、在来品種の改良、保全の取り組みとして、親田辛味大根、大滝甘かぶらの品種改良や下栗芋のウイルスフリー化の紹介がありました。

伝統野菜の取り組み事例として、木下義明 長野県下伊那農業改良普及センター主査が、「南信州における伝統野菜の取り組み事例紹介」と題し、信州の伝統野菜69種類のうち飯伊那地域で選定されている20種類のなかから、代表的な4品目についてそれぞれに生産者数、栽培面積、生産量及び栽培伝承への取り組みや課題の対応を紹介しました。飯田市上村の下栗芋のウイルス対策、天竜村のていざなすの商標登録と新たな栽培書と耕地の確保、阿智村清内路の清内かぼちゃの系統選抜と販路開拓、阿南町和合の鈴ケ沢なす、鈴ケ沢うりの栽培面積拡大と県外への販路開拓の取り組みの事例及びフードフェアへの出店や開催よる販路拡大への取り組みの紹介がありました。

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 テーマ3の鹿肉については、最初に唐沢秀行 長野県工業技術総合センター食品技術部門主任研究員が、「鹿肉の栄養成分分析結果の紹介」と題し、長野県内で捕獲されたニホンジカの生肉の一般成分と無機成分の分析結果を牛肉、豚肉、鶏肉の成分と比較して紹介しました。鹿肉は、他の畜肉と比較して、タンパク質が多く、脂質が少なく、無機成分のカルシウムと鉄が多く、脂肪酸組成については、不飽和脂肪酸のオレイン酸が少なく、パルミチン酸やステアリン酸などの飽和脂肪酸が多いと報告されました。
 鹿肉の利用については、鈴木理 (有)肉の鈴木屋代表取締役が、「低利用部位を含めた鹿肉利活用の取り組み」と題し、昭和32年に肉の鈴木屋を創業して以来、羊や鹿、猪などの山肉を長年、加工・販売してきた経験から、鹿が獲れる時期、処理方法、調理方法によって、鹿肉を美味しく食べることができることの紹介がありました。鈴木屋では、鹿が沢山獲れたから鹿肉を販売するのではなく、美味しい鹿肉を食べてもらいたいというスタンスで商売をしてきている。プロの猟師が獲ってきちんと処理した鹿肉は、とても美味しく、スネ肉やアバラ肉などの小さい部位も余すところなく利用している。夏の時期の鹿は草を食べていてとても美味しいものの、衛生上の問題から一般には販売していない。また、ドングリを食べた鹿は、その脂が牛より多くて美味しい。調理に関しては、鹿肉は水分と鉄分が多いので、火加減、塩加減次第で美味しく調理できるが、慣れないうちは、挽肉やカレーから始めると失敗がない。
 鹿肉の調理方法については、長谷部晃 さんざ亭代表が、「鹿肉の調理方法の事例紹介」と題し、鹿肉の調理方法を研究してきた経験から、燻したり、熟成させることにより美味しく調理した鹿肉の料理を写真で紹介しました。長谷部代表には、前回の第5回のシンポジウムでの「鹿一頭の有効利用」の講演に続き、今回は鹿肉の調理方法の紹介をお願いしました。鹿肉が美味しくないと言われる理由として、硬い、パサパサ、臭いといわれていますが、今回はこれらの弱点を除く方法として、燻しと熟成の加工方法が紹介されました。鹿肉を塩漬けにした後に燻すことで、パテ、浸し豆入りのハム、ねり物に調理されること、熟成した内もも肉は、ジューシーで美味しくなること、熟成ロースは、水分が少ないので、カツにすると美味しいことなどが紹介されました。

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シンポジウム後に豊丘村交流センターだいちで行った交流会には約60名の方が参加して、かあちゃんの店の源助菜など地元の食材による料理や肉のススキヤの鹿肉のジンギスカン及びざんざ亭の鹿肉のパテとハムを楽しみながら、活発に交流が行われました。

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